<導入事例>
オーエム機器株式会社

QFD-TRIZで先入観を排除した新商品開発
思い込み、惰性、意見の偏りを打破するために組織的に取り組む

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オーエム機器 梅田様

オーエム機器株式会社

技術生産部 開発課
梅田麻衣様
背景

顧客ニーズをしっかり捉えて付加価値の高い魅力的な新商品を出したい。競合とも差別化を図りたい。

そのためには従来の開発のやり方を打破したかった

課題

顧客もまだ気づいていない潜在ニーズを抽出して、それを満たすことで魅力的な新商品を市場に届けることが必要だった

効果

ユーザが本当に求めているものが何かをしっかり考えられるようになり、圧倒的な数のアイデアを組み合わせて設計コンセプトを構想できた

オーエム機器株式会社様(http://www.omrex.co.jp/)は、「お客さまの想いを形に」をモットーとして、OAフロアや住宅関連商品(シャッター、断熱物置用パネル)、福祉関連商品(トイレ用システム手すり、介護用水廻り車いす)など金属加工製品を中心とした新商品の開発・製造を行っています。
 

2018年から、付加価値を高め競合商品との差別化を図り、魅力的な商品を開発したいという思いから、QFD-TRIZの活用を始めました。
 

今回は、オーエム機器でのQFD-TRIZ手法を活用した新商品開発の取り組みについて、技術生産部 開発課の梅田麻衣様(写真)に弊社前古がお話を伺いました。

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前古: 梅田さん、よろしくお願いします。
今日は御社のQFD-TRIZを活用した新商品開発の取り組みについてお話を聞かせてください。まずはオーエム機器さんがどんな会社なのか教えていただけますか?

 

梅田様: オーエム機器は、金属加工製品を中心とした新しい商品を開発・製造しています。
社員120名と大きな会社ではありませんが、お客様の「こんなものがあったらいいな」という想いを形にするために、商品開発から製造・販売まで文字通り全員一丸となって取り組む開発型の企業です。
 

商品ラインは、オフィスビルの床下配線のためのOAフロア、シャッターや断熱物置用パネルなどの住宅関連機器、トイレ用システム手すりや介護用水回り車椅子などの福祉機器など多岐に渡ります。
 

現在は、3D CAD、3Dプリンタ、レーザ加工機などを駆使して開発型企業としてのさらなるレベルアップを図っています。
 

またグループ企業のオーエム産業はめっき加工を得意としています。めっき加工は素材に新しい機能をプラスして、今までできなかったことを実現できます。オーエム産業が持つ最先端の表面処理加工技術も積極的に取り入れて、オーエム産業・オーエム機器で「One OM」として顧客ニーズへの対応力を強化することにも努めています。

オーエム機器 社屋

顧客のニーズをしっかり捉えて付加価値の高い魅力的な新商品を出したい、競合とも差別化を図りたい、そのためには従来の開発のやり方を打破しなければならない

前古: 梅田さんは、福祉機器の開発を担当されていますね?
 

梅田様: はい。福祉関連機器は、近年引き合いが多く商品ラインアップも増えています。
 

介護保険制度が改正されて、介護の重点が介護予防と自立支援に置かれるようになりました。
 

福祉機器も、介護が必要になるのを防ぐために使う、必要になった場合はそれ以上の悪化を防ぐために使う、のように、介護予防と本人の能力を引き出し本人らしく生きるための自立支援、また介護者の負担軽減にどう貢献できるかが重要になっています。

 

前古: その福祉機器の開発で、QFD-TRIZを活用しようと思った背景は何だったのですか?
 

梅田様: 福祉機器事業では、大手メーカが当社の主要取引先です。
そうした販売メーカからの要望や情報に基づいて当社で設計を進めるのが新商品開発の典型的な流れです。
 

OAフロアや住宅関連など他の分野で培った技術を展開して、自分たちの知識や経験を組み合わせて、販売メーカと何度もやり取りしながら開発を進めます。
 

こうしたやり方で開発した商品のひとつが「据置き型の玄関手すり」です。住宅での工事が不要でレンタルできるのが特徴です。
 

この商品を開発後、販売メーカに市場での評価をヒアリングしたところ、「ベースが重くて持ち運びがしにくい」「ベースと床の段差が気になる」といった声があるとのことでした。

据え置き手すりの問題

要望を十分に取り入れて開発をスタートさせたはずなのに、なぜ後からこうした声が出てくるのだろうか?そんな疑問が沸きました。
また今までの開発のやり方では、従来商品の改善はできるのですが、発想が狭くて目新しいものになりません。
 

顧客のニーズをしっかり捉えて付加価値の高い魅力的な新商品を出したい、競合とも差別化を図りたい、そのためには従来の開発のやり方を打破しなければならない、そんな理由からQFD-TRIZに取り組むことになりました。

顕在化された顧客の声を起点に、顧客もまだ気づいていない、あるいは諦めているような潜在ニーズを抽出して、それを満たすことで魅力的な新商品を市場に届けることが必要です

前古: QFD-TRIZ実テーマコンサルティングに取り組んで頂きました。まずQFDで、顧客ニーズの分析と開発目標を決めましたね。実際にやってみてどんなことが印象に残りましたか?
 

梅田様: 「お客様の想いを形に」をモットーとする当社にとっては、顧客の生の声から、顧客がそこで本当に訴えたかった要求を分析、評価できるので、とても魅力的な手法だと感じました。
 

顧客の声の洗い出しでは、使用者、介護者、レンタル業者、それぞれの立場になり切って洗い出しを行いました。
 

次に洗い出した顧客の声を分析して要求品質に言い換えていきました。そして狩野モデルを使って、要求品質と顧客満足度との関係、そして要求の強さを検討しました[下図:品質の二元性(狩野らによる使用者の満足感と充足度の対応:狩野紀明教授)]

狩野モデル

このプロセスで大切なのは、顕在化された顧客の声に応えるだけでは、狩野モデルでいう魅力的品質は見い出しづらいということです。単純に顧客の声からQFDをやって商品開発しても、すぐに価格競争に陥ったり、土俵に乗れても利益が生み出せない商品になりかねません。
 

顕在化された顧客の声を起点に、顧客もまだ気づいていない、あるいは諦めているような潜在ニーズを抽出して、それを満たすことで魅力的な新商品を市場に届けることが必要です。
 

今回は使用者とレンタル業者の立場になり切って、使用シーンやレンタル業務シーンを想定しながら、顧客満足に繋がるニーズ抽出、ニーズ重要度分析に取り組みました。
 

IDEAさんからコンサルを受けたQFDは、こうした手順をきっちりと踏んでいけるプロセスだったのが良かったです。
 

QFDの結果、顧客にとって魅力的で重要度も高いレベルアップ項目として、「ベースにつまづきにくい」「手すりが握りやすい」「メンテナンスがし易い」の3項目を選びました。

 

前古: QFDで開発コンセプトと課題を明確にした後は、TRIZでその課題の解決に取り組むれましたね。
 

梅田様: はい、レベルアップ項目について、TRIZ課題解決プロセスを使って、解決に取り組みました。
 

まず、問題の真の原因は何かを機能属性分析と根本原因分析で掘り下げていきました。例えば「メンテナンスがしにくい」を解決するには「ベースと縁材の間にすきまがある」「ベースと縁材に段差がある」などの根本原因を解決する必要があることが分かります。

根本原因分析

次に、TRIZの発想ツールを使って根本原因を解消するアイデアを出していきました。
 

既存の設計では、ベースを縁材にはめ込む構造になっています。
 

「ベースと縁材の間にすきまがある」問題を解決しようとすると、
「すきまが大きいとベースを縁材にはめ込みやすくなるが、すきまにゴミが溜まりやすくなる」
「逆にすきまを小さくすると、すきまにゴミは溜まりにくくなるが、ベースを縁材にはめ込みにくくなる」
といった技術的矛盾、背反特性にぶつかります。
 

根本原因から技術的矛盾を問題定義したら、TRIZの「発明原理」を使って効果的にアイデアを出すことができました。
 

また同じ問題に対して「システム進化パターン」を使うと、例えば「新しい物質の導入」というヒントから、ベースと縁材のすき間に熱で膨張する何かを詰める、というアイデアが出ました。
 

同じ問題も違うツールを使うことで視点が変わり、自然とアイデアが広がっていきました。

 

前古: アイデアを出すときに、何か注意された点はありましたか?
 

梅田様: アイデアを出す段階では、コストや実現性などを考えない、他の人が出したアイデアを批判しない、人が出したアイデアにどんどん便乗する、質より量が大事、といったルールを設定して取り組みました。先入観や思い込みに囚われないためには、とても大切だったと思います。
 

またアイデア出しに制限時間も設定しました。行き詰る前に終了して、日を空けて思考を整理してからまた集まって取り組みました。
 

こうやってアイデアを増やしていき、全部で400件以上のアイデアを出すことができました。アイデアの中には「つまづかない靴下を履く」といったような、これまでの開発手法では思いもよらなかったアイデアもありました。

411件のアイデアを創出

アイデア出しができたら、アイデアを結合、有効化するフェーズになります。
 

私たちでは、ベースや縁材に関するもの、手すりに関するものといったように部位ごとにアイデアを整理し、次に整理したアイデアを組み合わせて15個のサブコンセプトを作成しました。
 

例えば、「ベース板に穴を開けて軽くする」と「縁材をなくしてベースを塗装する」というアイデアを結合してひとつのサブコンセプトを作りました。

サブコンセプトへの有効化

次に、3つのレベルアップ項目について1年後、3年後、5年後の目標を設定し、その目標値に対してサブコンセプトの予想効果を評価しました。
 

その結果に基づいてサブコンセプトを結合して、最終的には8つのメインコンセプト、解決案にまとめ上げました。また各メインコンセプトについては、それを実現する上でのコストや設備投資、必要になる新技術などの課題を洗い出しました。

ユーザが本当に求めているものが何かをしっかり考えられるようになり、圧倒的な数のアイデアを組み合わせて設計コンセプトを構想できた

前古: QFD-TRIZを通して実行してみて、どんな気付きがありましたか?
 

梅田様: 新商品開発の構想という意味では、使用者、介護者、レンタル業者など、商品に関わる各ユーザが本当に求めているものが何かをしっかり考えられるようになったこと。そのニーズに応えるための手段を、先入観や思い込みを排してアイデアを拡げ、圧倒的な数のアイデアを組み合わせて設計コンセプトとして構想できたことが新鮮でした。
 

また開発課題が見える化できたり、開発企画がブレないことで設計の手戻りがなくなる、メンバーの発言し易い場をつくれるなど、社内コミュニケーションとしても効果があると思います。

 

前古: 梅田さん、今日は、QFD-TRIZを活用した貴社の取り組みについて、貴重なお話しを聞かせて頂き有難うございました。これからもよろしくお願いします。

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あとがき

顧客のニーズをしっかり捉えて付加価値の高い魅力的な新商品を出したい、競合とも差別化を図りたい...商品開発をしていれば当然の想いだと思いますが、そのための具体的なアクションには踏み出せないでいる企業も多いかと思います。

オーエム機器様がQFD-TRIZを活用して実践した、思い込み、惰性、意見の偏りを打破する取り組みは、新商品開発のやり方を模索している多くの企業にとっても参考になると思います。

(本内容は、2020年4月時点のものです)

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