i-Advanced TRIZ®
TRIZ(発明的問題解決理論)とは
TRIZ(トリーズ)はどのように生まれ、どのように発展したか?
TRIZの日本式活用法とは?TRI
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TRIZ(トリーズ)はどのように生まれ、どのように発展したか?
TRIZの日本式活用法とは?TRI
TRIZ(トリーズ)は、膨大な特許・技術文献の統計的分析に基づき、革新的な問題解決のための発想の着眼点や、思考プロセスを体系化した理論です。
元々旧ソ連で研究され、その後東西冷戦の終焉と共に欧米、そして日本や韓国などへも広がりました。
TRIZ(トリーズ、トゥリーズ)という言葉は、「発明的な問題解決の理論」(Theory of Inventive Problem Solving)を意味するロシア語「ティオリア リシェニア イズブレタチェルスキフ ザダチェ」の4つの単語の頭文字に由来します。
このページでは、
について解説します。
TRIZの創始者ゲンリッヒ・アルトシュラ―(Genrich Altshuller)は、1926年に旧ソ連のタシュケントに生まれました。
子供の頃から発明の才能を認められていたアルトシュラ―は、若くしてソ連海軍の特許審査官の職に就きます。
アルトシュラ―は特許審査官として日々多様な分野の特許を調べるうちに、「業種や技術分野が異なっていても、問題解決のやり方には共通する要素があるのではないか?」と考えました。
そして「優れた問題解決に共通するやり方を抽出してそれを体系化できれば、その法則を新たな問題の解決(発明)にも適用できるのではないか?」という仮説を立てました。
この仮説に基づき、アルトシュラ―は(後に多くの賛同者と)、膨大な特許文献の分析に着手します。そしてまずは「発明原理」と呼ばれる、矛盾問題(背反特性)を解決するための発想支援手法を体系化しました。
その後ソ連各地にTRIZスクールと呼ばれる組織が生まれ、最終的には250万件と言われる膨大な特許の統計的調査と分析が行われ、「発明原理」、「システム進化パターン」、「科学・工学的効果」などの革新問題解決の発想の着眼点と思考プロセス、また「ARIZ(アリーズ)」と呼ばれる問題解決のアルゴリズムなどが整備されていきました。
世の中には発想手法と呼ばれるものが他にも存在します。例えばアイデアを広げるためのブレーンストーミング法や、アイデアを整理して問題解決を導くためのKJ法などが良く知られています。
こうした他の手法と比べてTRIZはどう違うのでしょうか?
発想手法としてのTRIZの大きな優位性は次の2点です。
特許には、革新的な課題解決の実例が、何十万件、何百万件と具体的に記述されています。この革新的な課題解決の「事実・実例」から帰納的に導かれた発想手法がTRIZです。
具体的な事実と実例に基づいているので、TRIZは、現実の課題解決に対してきわめて実戦的な着眼点とヒントを与えてくれます。
他の発想手法は、「先入観に囚われないためには、こう考えましょう」といった助言はくれますが、具体的なアイデアの引き出しとなるのは“自分(または参加者)の経験の範疇”に限られます。
それに対してTRIZは、特許という膨大な事例から抽出された着眼点とヒントを与えてくれます。TRIZを使うことは、先人たちの膨大な知識と知恵のデータベースを活用する、ことを意味します。
東西冷戦時代、TRIZはソ連の門外不出ノウハウとして、西側諸国にはその存在すらほとんど知られていませんでした。
しかし1980年代後半からのペレストロイカとソ連崩壊後、TRIZをマスターした旧ソ連の多くの技術者が西側に渡り、1990年代の米国では彼らを中心にTRIZのコンサルティングやソフトウェアを提供する会社が生まれました。
日本では、1997年に当時の日経メカニカル誌に「超発明術」としてTRIZの特集記事が連載され話題になりました。
1999年にはTRIZ支援ソフトウェアの日本語版もリリースされ(インベンションマシン社のTechOptimizer。現在IDEAが提供しているIHSマークイット社のGoldfireの前身だった製品です)、大手電機メーカや自動車メーカなど数百社がTRIZを導入しました。
こうして一種鳴り物入りで日本に上陸したTRIZでしたが、数年で状況は一変します。2002年くらいまでに多くの企業が、「期待したほどの効果が出ない」、「難し過ぎて使えない」とTRIZの活用を断念し撤退していったのです。
しかし日本におけるTRIZの活用は、この間、ただ衰退していったわけではありません。
「開発現場の技術者が、TRIZをうまく使って成果を出すには何が足りないのか、何が必要なのか」…が検討され、TRIZと他の開発手法を組み合わせるなど、日本独自の進化を遂げていきました。
その結果生まれたのが、現在、日経ものづくり誌などで「TRIZの日本式活用法」と紹介されている「IDEA流のTRIZ課題解決プロセス」です。
私たちIDEAは、2003年の設立以来、この「日本式活用法」を進化させながら、企業におけるTRIZの実戦的活用を支援しています。
TRIZの「日本式活用法」は、初期のTRIZ活用における失敗・教訓から生まれました。日本式活用法には、二つの特長があります。
TRIZを使ったが期待した成果が得られなかった…そういう事例を調べてみると、二つの問題点が浮かび上がりました。
一つ目は、課題の解決を阻んでいる根本原因の分析が掘り下げ不足。
また根本原因まで分析できても、その根本原因を、TRIZでアイデアを出すための問題定義に適切に変換できていない、いわばTRIZによるアイデア出しの前(準備)工程がしっかりできていなかったのです。
そこで「日本式活用法」では、機能属性分析と原因結果分析という二つの分析手法と、TRIZ問題定義表というツール、それらを如何に使うかのノウハウを整備しました。
二つ目は、せっかくTRIZで出したアイデアがあっても、そのアイデアを魅力的で実行可能な解決策(コンセプト)に磨き上げるプロセスがなかったことです。
あるいは、TRIZを使って一発でそんな解決策を出そうとして失敗したとも言えます。
そこで「日本式活用法」では、アイデアを出す段階と、アイデアをコンセプトに磨き上げる段階を明確に分離しました。
TRIZを使うときには多様な視点から圧倒的に多くのアイデア(解決策の素材)を出すことに注力します。そしてその後工程として、アイデア(素材)を評価・組み合わせて最適な解決策(コンセプト)に有効化するプロセスとツール、ノウハウを整備しました。
こうして、課題の本質を分析する前工程と、アイデアを解決策に有効化する後工程が加わった「IDEA流のTRIZ課題解決プロセス」が生まれました。導入事例のページで紹介しているIDEAのクライアント企業のTRIZ適用事例では、例外なくこのプロセスが活用されています。
IDEA流のTRIZ課題解決プロセスは、TRIZを“開発現場の通常の技術者が活用できる道具”にしましたが、新製品を企画・開発・設計するフロー全体から見ると、未だ二つの問題点が残っていました。
「どんな製品を開発すれば良いのか(そのために解決すべき技術課題は何か)」と、「新しい解決策(コンセプト)を盛り込んだ新製品の品質をどう確保すれば良いか」…この二つをどう考えて行けば良いか、という問題です。
この問題点に対処するため、「日本式活用法」では、TRIZによる課題解決の前工程として、QFD(品質機能展開)を活用して、高い顧客価値に繋がる商品企画の立案と、その企画を実現する上での重要な技術課題の抽出を行います。
そしてTRIZで技術課題の解決案(コンセプト)をつくった後は、新しい解決コンセプトを信頼性の高い詳細設計に落とし込むためにタグチメソッド(品質工学)を活用します。
こうして、革新的問題解決理論であるTRIZと、日本生まれの開発手法であるQFDとタグチメソッドの連携活用による商品開発アプローチが生まれました。現在IDEAのクライアント企業の多くは、TRIZだけでなく、この手法連携による“魅力的で革新的な製品開発”に取り組んでいます。