特性要因図を使い倒す
皆さん、こんんちは。
IDEAコンサルタントの桑原です。
近年、研究開発のスピードがますます求められる中で、新製品ゃ新技術を開発する際に、開発対象となるシステムをじっくり見直す機会が減っています。限られた時間で成果を出すことが求めらるからこそ、システムのどこに注目すべきか、課題に取り組む上で重要なポイントはどこかを、担当メンバー間でしっかり話し合い、明確にして共有することの大切さがより増していると感じています。
課題を共有するためには、メンバー間で共通の言葉(以下、「ワード」と記します)が必要です。IDEAの”「機能」で考える”目的別課題解決プログラム では、「機能」というワードを用いて課題解決を進めていきます。
機能と似た言葉に「特性」や「性能」があります。例えば、自動車の場合、「トルク」や「出力」、「ブレーキの制動距離」や「加速性」などが特性や性能に当たります。これらは仕様やスペックとも呼ばれ、システムや部品の性能を表すものであり、機能そのものを説明するものではあり
ません。
”「機能」で考える”目的別課題解決プログラムの
概要紹介動画はこちらから
機能とは、簡単に言えば、そのシステムや部品の「働き」です。先ほどの自動車の例で言えば、車の機能の一つは「人を移動させること」です。エンジンという部品の機能の一つは「プロペラシャフトを回すこと」であり、エネルギー変換の観点からは「熱エネルギーを回転エネルギーに変えること」です。ブレーキの場合は「車を止めること」が機能と言えるでしょう。このように、システムの機能は一つに限らず、サブシステムや部品ごとのさまざまな機能で成り立っています(機能に関しては、今後別のコラムでさらに詳しくご紹介する予定ですので、どうぞお楽しみに。)
この「機能」で課題を把握する前の重要なステップとして、”「機能」で考える”目的別課題解決プログラム では、「課題に関して関係者が知っていることを見える化して共有する作業」を行います。この道具として特性要因図を使います。
解決したい課題を分析する際は、まず対象となるシステムの「特性要因図」を作成します。特性要因図は、QC七つ道具の一つとして知られており、別名「フィッシュボーンチャート」とも呼ばれます。これは、解決したい事象に影響を与えている特性を、魚の骨のようにつなげていくものです。QC七つ道具では、書き方のルールがあり、その手順に従って図を作成することで、課題の原因となる要因を明確にできます。
図1 特性要因図の例
本来の特性要因図は、解決したい課題に影響を与える要因を明確にするためのものですが、IDEAの課題解決プログラムでは少し異なる目的で使用します。具体的には、解決したい課題において、実際に取り組むべき範囲を明確にするために作成します。解決すべき課題が明確であっても、メンバー間の問題認識は多様であることが多く、方向性が一致していても、詳細に入ると認識や知識・経験の違いからアプローチがばらばらになることがあります。そこで、まずはスタート時点で、メンバーの思いや考え方を「見える化」するために、特性要因図を活用します。
IDEAの”「機能」で考える”目的別課題解決プログラム では、特性要因図の作成にiQUAVIS IDEA Packageソフトウェアを使うため、通常の「魚の骨」のような表現ではなく、骨を階層構造のツリーで表現し、ツリーと関連するパラメーターを自由に記入していきます。「自由に」というのは、無理に表現や次元を合わせる必要はないという意味です。課題(テーマ)に対して経験したことや考え、事実や意見などを書き出すことで、メンバーの集合知を高めることを目指しています。
iQUAVIS IDEA Packageで作成する特性要因図には、2つのフォーマットがあります。一つは「空間的特性要因図」、もう一つは「時間的特性要因図」です。
空間的特性要因図は、システムの構成要素(部品やモジュールなど。もし材料などが対象の場合には、「表面層」のように空間的に見て構成要素となるもの) の視点から、課題に関連する特性(パラメータ)を洗い出すもので、時間的特性要因図の方は、生産工程や使用方法など時間的な流れのあるプロセスの視点から課題につながる特性を見つけ出します。どちらを使うかは課題に依存しますし、場合によっては両方を使うこともあります。
ここでは、空間的特性要因図を例に話を進めます。まず、課題を魚の骨の頭に記載します。次にその課題を引き起こしているシステムを部品レベルに分解します。この部分は系統図的なツリーの表現になります。部品レベルに分解したら、それぞれの部品に関連する特性パラメータを自由に記入します。この段階では「きれいにまとめる」や「整理する」といった考えは持たず、参加メンバーの集合知を活かして、特性パラメータを漏れなく書き出すことが重要です。
特性パラメータが出揃ったら、それらに共通するキーワードで整理します。この部分には少し慣れが必要ですが、例えば、原因分析がテーマであれば原因の種類や項目でまとめ、用途探索がテーマであれば顧客の視点や製品の特徴でまとめることが多いです。図は、弊社テキストで取り上げている湯沸かしポットの例です。
図2 湯沸かしポットの空間的特性要因図と、
iQUAVIS IDEA Packageの画面例(図中 右上)
このようにしてシステムの特性要因図を作成すると、課題に関連する部品と特性パラメータが明確になります。この特性要因図に基づいて、課題にアプローチする際の優先的な取り組み範囲を明確にしていきます。
さらに、作成した特性要因図は、後から振り返るとき、その優先範囲を決めた際の判断根拠としても活用できます。
iQUAVIS IDEA Packageで特性要因図を作成すると、システム内の要素やパラメータ、それらの間の関連線が多くなっても、特定のパラメータを指定して、そこに関連した部品やキーワードのみを表示することができます。特性要因図が複雑になってきたら、この選択表示機能を活用して進めると良いでしょう。
いかがでしたか? 今回は、特性要因図を活用した課題解決のアプローチについて、その基本的な流れと重要性をお伝えしました。特性要因図を適切に活用することで、対象課題と取り組み範囲を明確にし、効果的に課題解決に取り組むことが可能になります。
桑原@アイデア
”「機能」で考える”目的別課題解決プログラムの
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