アフターコロナで大きく変わる人々の価値観 その1(変容するユーザの行動を分析し、価値観の変化と潜在ニーズを探る)
こんにちは、IDEAの緒方です。
巷では新型コロナの影響でエネルギー需要の大幅な減少、飲食や観光のサービス業の減益、リモートワークや通販の拡大によるIT関連企業の躍進、所有から共有へと脚光を浴びてきたシェアリングビジネスが大きな危機に直面する等、大きな変化が伝えられています。
そうした変化の中で、今後、自社製品を取り巻く環境やユーザーの要求がどのように変化するかを気にしている読者の方も多いと思います。
このような変換点では表面的な環境の変化だけに目が奪われがちですが、感度を上げておくべきは「激変する環境下で暮らしている人々の価値観の変化」だと思います。
ある転職会社の調査で全国の転職希望者(20代~40代の男女)を対象に行った調査では、仕事や生活で新しいことを始めた人が半数以上いたそうで、その中の90%以上は新型コロナウイルス終息後も新たに始めたことを継続したいと答えたそうです。
東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムを設計したことで知られる建築家 隈研吾氏が週刊「東洋経済」でのインタビューで、日本のオフィスや住宅はアフターコロナでどのように変わるか?との質問に「人はもっと自由になる」と語っています。
隈氏は「高いビルに住んでいる人ほどエリートというのは古い価値観。皆が定時に通勤して都心のオフィスを使うのは20世紀型の発想である。1つの場所に閉じ込められ1つの時間帯に働くという優等生的な都市ではなく各人に自由度がある方が感染症には強い。どこに住み、どこで働き、時間をどう使うか。それを自分でデザインすることが求められる。」と語っています。
新型コロナウイルスによる外出自粛や働き方の変化をきっかけに、自身の仕事や生活、価値観と深く向き合うことになった結果、従来大事と思われていたことがそれほどでもなくなり、新たな点が着目されるようになってきているようですね。
このような顧客の新たな価値観の変化を掴むにはどうしたら良いでしょうか?
顧客から発せられるニーズとしてこの変化を掴もうと思っても簡単では無いでしょう。なぜなら、顧客自身がそうした自身の変化に気がついていないことが多いからです。
価値観の変化を掴む手がかりは、実は顧客の行動にあります。
コロナをきっかけに新たなことを始めた人が増えたように、価値観の変化は顧客の行動に表れます。つまり、顧客の行動を分析すれば、そこから価値観の変化で生まれる潜在ニーズも探ることができるわけです。
行動から顧客の価値観を捉え、ニーズに結びつける方法としてはは、UX(User Experience)が知られています。UXとは「ユーザー体験」と訳され、「UXデザインの教科書」の著者 安藤昌也教授は、UXデザインとは「ユーザーがうれしいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階から理想のユーザー体験(UX)を目標にデザインしていく取り組み」と言っています。顧客の行動分析というとエスノグラフィーに代表される「行動観察」という手法があり、これはUXの中心的な手法とされています。
UXはユーザー体験という人間の感情を伴う本質的な領域を扱うため、認知工学、人間工学、感性工学、社会心理学、文化人類学など幅広い知識が必要となります。そのためUXの専門書を見ても内容の幅が広く、理解しにくいし、手短に応用できそうもないと考える読者も多いのではないでしょうか?また、UXはB to C企業の企画部門やデザイナーのものと思っている人も多いと思います。
しかし、UXは製造業の技術者にとって別世界のことではありません。アフターコロナで顧客に大きな意識の変化が起きている今こそ、UX的なアプローチを身に着けることをお薦めしたいと思います。
私たちIDEAでは、目的別課題解決プログラムの支援ソフトウェア iQUAVIS IDEA Packageを使ってUXで顧客の価値観を想定しながら、潜在ニーズを分析する方法を開発者・設計者にも判りやすい形で展開できるプログラムを用意しています。これを使ってユーザーが使う「モノ」から、使う行動の「コト」を分析する術を身に着けましょう。
次回はこのUX分析についてもう少し詳しく紹介していきたいと思います。
緒方@IDEA
→次回のコラム「アフターコロナで大きく変わる人々の価値観 その2(UX分析で顧客の潜在ニーズを引き出す)」を読む