連載コラム
「アイデアをどう伝える?
技術者のためのイラストレーション講座」

アイデアを効果的に伝えたり活用するための、
「アイデアを正しく伝える」テクニックを基礎から解説します

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技術者のためのイラストレーション講座 ~基礎編~(4)

笠井肇


こんにちは、IDEAの笠井です。


【ステップⅡ】では、パース(透視図法)の基本を学び、色々な角度から立方体を描く練習をしました。今回はその立方体を分割したり、倍増したりすることによって、比率に基づいた立体を表現する方法をお伝えします。


【ステップⅢ】-立方体の分割と倍増-


前回、立方体は六つの面がすべて正方形でできているので、作図したときに辺の長さがどう変化したかが分かりやすいと説明しました。実はその他にも、対角線やその交点などを利用していろいろな形を作図しやすいという便利な特徴があります。ここではその特徴を使って、立方体の視覚的な《分割》や《倍増》という応用操作を理解しましょう。


《分割》

先ずは、立方体を分割する方法です。

最初に平面(正方形)を使って考えてみます。下の左図は、どなたもご存じの方法で正方形を1/4の大きさに分割したものです。対角線の交点Oを通って辺に平行な線を引けば、1/4の正方形ができますね? 立方体のすべての面は正方形ですから、パースで作図した立方体の各面にこの分割方法を適用すればよいわけです。出来上がりは右図のようになります。



立方体の分割


作図方法を下に、①→②→③の順番で示します。この場合は2点透視図ですから、立方体のそれぞれの面を分割する線(平行線)は左右の消失点に収束するように描きます。①は手前右側の面を上の正方形と同じように分割し、②はそれを左右反転させて左の面を分割しています。③は右面の中心Oから左側の消失点に、左面の中心Qから右側の消失点に、それぞれ線を引いて、体積が1/8の立方体を作図したものです。


立方体分割の作図方法



以上がパースで描いた立方体を分割する方法です。この基本が理解できると、応用も自在にできるようになります。下に例示した4種類の立体は、すべてが上の①~③の手順に則っていることがお分かりになると思います。


ここでは説明のためにプレゼンテーションツール(MS-PowerPoint)で作図しましたが、皆さんはフリーハンドで、消失点を想像しながら描いてみてください。大切なのは、基本となる立方体をある程度正確に描くことです。



4種類の立方体



《倍増》


次は、立方体を倍増させる方法です。この方法は、寸法の比率が分かっている直方体の作図に応用できます。


分割と同じように、正方形を使って横に2倍、3倍、あるいは1.5倍などに増やす方法を理解しましょう。倍増させる場合は直角三角形の相似を利用します。正方形の対角線の交点Oをとおって辺に平行な線を引くところまでは分割の場合と同じです。下の図をご覧ください。左の2倍については、正方形の上辺と下辺それぞれの延長線、および対角線の交点Oをとおって上辺(下辺)に平行な中心線と右辺との交点Qを使います。


△Qabと△Racは直角三角形で相似形ですね? そして線分Qb:Rc=1:2ですから、ab:ac=1:2、つまりacはabの2倍の長さであることが分かります。したがって、正方形を2倍に伸ばすには、下辺の左の角から右辺の中点をとおる線と上辺の延長線との交点を求めればよいわけです。


同様にして右の図では、下辺の中点からの線を利用して、下辺の長さの1.5倍の位置を求めています。これらの操作を繰り返していくことで、正方形をきりのよい長さに倍増させることができるのです。


立方体を倍層する


この方法を用いて、パースで描いた立方体を倍増させます。下の図は、その手順を示したものです。


立方体を倍増する作図方法



いかがですか? 立方体をパースで分割したり倍増させたりする方法を、理屈の上では理解していただけたと思いますから、あとは少し練習するだけです。


繰り返しますが、発想したアイデアを線画であらわす目的は、分かりやすく、正しく伝えること、記憶に留めることにありますから、消失点を厳密に設定する必要はありません。頭の中にざっとイメージする程度で、素早く描いてくださいね。


それでは、前回いろいろな立方体を描いたのと同じように、立方体をフリーハンドで分割や倍増させてみましょう。下の図は私が描いたものです。今までにご説明した方法だけを使って描きましたので、参考にしてください。


上段は、いずれも大きめの立方体を初めに描いてから、側面や上面を対角線で分割して作図しています。下段の左は、手前の立方体の左奥行きを4倍に延長した直方体です。中央は、左奥行きを1/2に、右奥行きを2倍にした直方体です。右は、高さを2倍にした直方体です。想定した消失点に向かう補助線や、対角線の交点などを使いながら描くという点ではどれも共通しています。


いかがですか? パースの基本と、簡単なコツを身につけるだけで、いろいろな立体を作図できますね?


フリーハンドで描いた様々な立方体


さて、これまでは立方体を使って、基本的な作図方法を学んできました。次回はパースに則りながら、円(楕円)の描き方に進んでいきます。


笠井@IDEA



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笠井 肇
笠井 肇

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