「TRIZとは?(第6回) TRIZは使えない? 使える? その差を決めるものは? ~ “TRIZは使える”と“TRIZは使えない”を分ける3つの要件」
こんにちは、IDEAの鹿倉です。
暫くのブランクがありましたが、連載コラム「TRIZとは?」の第6回です。
今までの本コラムでは、TRIZの「発明原理」(第2回、第3回)と「システム進化パターン」(第4回)、そして「知識データベース」(第5回)を紹介しました。
なんだこれ? 全然違う。見たことないことやってるぞ
第1回のコラムで、こんなことを書きました。
”この連載コラムでは、私がIDEAで仕事をする中で、TRIZについて学んだこと、目撃したことを、現在進行形のことも交えながら少しずつ書いていくつもりです”
連載を再開するにあたり、初心に戻って、まずは私がIDEAでの仕事を始めたときに、自分自身一番”衝撃を持って目撃した”ことについて書いてみます。
白状すると、IDEAに加わる前まで、私自身、TRIZについては懐疑的でした。
その理由は単純です。営業担当としてそれまでお付き合いしていた企業のエンジニアで、TRIZを活用して難題を解決している人を直接知る機会がなかったからです(本当は目の前にいたのに、私が知らなかっただけかもしれませんが...)
「サムスンやインテル、あるいは日本の企業の何社かが、TRIZをすごく有効に活用している」という話は知ってはいました。
IDEAに加入する前の当時の私は、イノベーション支援ソフトウェアGoldfireの米開発元Invention Machine Corporationの日本法人の立ち上げに参画していました(元々Goldfireは、ボストンにあったInvention Machineという会社が開発した製品です)。
ですから自社製品のユーザとして、そうした企業におけるTRIZとGoldfireソフトウェアの活用成果について情報は入ってきました。
しかし、そうしたTRIZを有効活用できている企業と、できていない企業の、いったいどこからその差が生まれるのか、当時の私は知りませんでした。
「分らなかった」というより、文字通り「知らなかった」。今から思えば、「知る」機会がなかったのです。
その「知る」機会は、IDEAに加入して間もなくやってきました。
その日、私は、コンサルタントのひとりとクライアント企業に同行しました。
そして、彼が客先のチームの7人のエンジニアと一緒に、TRIZを使って実際の技術課題の解決に取り組むのを、丸一日会議室の隅に座って見ていました。
そのプロジェクトでは、4か月に渡り合計9回、そうしたコンサルセッションを実施しました。私は、クライアントの了解を得てそのうち3回に同席させてもらい、TRIZによる課題解決プロセスが実際に進行して行く様を見させてもらいました。
...なんだこれ?全然違う。見たことないことやってるぞ...
これが私の率直な感想でした。びっくりした、と言ってもいいです。
「TRIZは使える」と「TRIZは使えない」を分ける3つの要件
正直そのときは、ただ驚いていただけで、「TRIZを有効活用できている企業と、できていない企業の差」について、何か結論らしきものを得られたわけではありませんでした。
しかし、その後、他のクライアント企業の話を伺ったり、また過去にTRIZの導入に取り組んだがうまく行かなかったという企業から当時のやり方を聴いたりすることで、「TRIZは使えない」と「TRIZは使える」を分ける要因が見えてきました。
それが次の図に示す、「使えるTRIZ」のための3要件、です。
私が見てきた限り、TRIZを有効活用している企業に共通するのは、手に入れやすいものから順番に次の三つです。
- ツール(道具)が良い。良い道具を組み合わせる
- 現場で実践的に使うための、磨かれたプロセス(手順)
- 豊富な適用経験に培われた、ツールとプロセスを使いこなすスキルとノウハウ
ツール(道具):
ツールには、TRIZの問題分析や発想手法、またTRIZの問題解決手順(「TRIZの問題解決アルゴリズム」とも呼ばれます)、またTRIZ以外の問題分析や課題整理のための手法、そしてGoldfireやIDEA-TRIZ Toolboxのような支援ソフトウェア、が含まれます。
プロセス(手順):
ツール(道具)があっても、それらをどう使えばいいか分からなければ、実際の課題解決はできません。不具合の解決、既存機能の強化、小型・軽量化、省エネや環境対応、コストダウン、まったく新しい機能の実現など、それぞれの課題に取り組むためには、ツール(道具)をどのように使えば良いかの実践的なプロセス(手順)を知ることが必要です。
ここまでの1と2は、ソフトを導入したりセミナーを受講したりにお金はかかるかもしれませんが、その気にになれば比較的容易に「知る」ことはできるでしょう。
しかし、3の「ノウハウやスキル」は話が別です。
スキル・ノウハウ:
ツールとプロセスを使いこなすスキルとノウハウは、実際に多くのリアルな問題解決(しかも難問!)にTRIZを活用した経験から学ぶ必要があります。
単にうまく行った経験だけでなく、痛い目を見た失敗経験も重要です。失敗と成功の両方を知らなければ、なぜ失敗したのか、なぜ成功したのか分からないからです。
...なんだこれ?全然違う。見たことないことやってるぞ...
今から思えば、IDEAに加入したばかりの私がコンサル現場でこう驚いたのは、目の前で見たことのないプロセスをやってるのを見たから、今まで聞いたことのないスキルやノウハウを、IDEAのコンサルタントがクライアント企業のエンジニアに伝えているのを見たから、でした。
数多くの実テーマ(難題)に取り組み、「壁」を越えなければ得られない「スキル」と「ノウハウ」を、コンサルを通じてクライアント企業に提供
IDEAは、2003年の設立時から一貫して、TRIZを活用した「実テーマ解決」にこだわってきました。
解決できることが分っている演習テーマではなく、現実の難題に取り組むからこそ様々な「壁」があります。実課題の解決にこだわり壁にぶつかってきたからこその、手法活用の工夫や、ファシリテーションのノウハウが生まれます。
現実の難題の解決に繰り返し取り組みながら、「TRIZは使えない」を「TRIZは使える」に変えるために、工夫やノウハウを積み重ねてきました。
1998年に日本に本格的に紹介された「TRIZ]。
当初「TRIZは使えない」と言われたその「TRIZ]が、
どう「TRIZは使える」に変わったのか、IDEA代表の前古が当時を振り返り解説します
そうやって生まれたIDEA流のTRIZ活用の体系(ツール/プロセス/スキル・ノウハウ)は、「日経ものづくり」(日経BP社)や「機械設計」(日刊工業新聞社)などのメディアで、”TRIZの日本式活用法”と紹介されています。
実テーマ解決コンサルティングでは、”TRIZの日本式活用法”のエッセンス(プロセスだけでなく、スキル・ノウハウも)を、クライアント企業に出し惜しみなくお伝えしています。
私たちが持っているスキルやノウハウを出し惜しみしていたら、実際の難題の解決はできません。ですからそれが必然なのです。
もちろん、TRIZの活用は、イチかバチかのギャンブルでも、当たるも八卦当たらぬも八卦の占いでもありません。そこは大事なポイントです。
導入事例ページで紹介している事例の多くは、その企業が初めてTRIZを導入したときの事例です。
つまりその企業において、”TRIZ初挑戦”の成果です。それでも、しっかり取り組めば、ちゃんと成果は出ます。
例えば、伸和コントロールズ株式会社のご担当者インタビュー(「限られた経営資源の中からヒット製品を生み出す(QFD-TRIZを活用した革新的製品開発への挑戦の軌跡)」)の中で触れられている「精密空調装置」の開発プロジェクトは、同社にとってまさにそんな”初挑戦”でした。
そこでも実テーマ解決のコンサルを実施させて頂き、装置のフットプリント50%削減という大胆な目標を達成しています。
TRIZの活用は、ツールをインストールして、データを入れてボタンをポンっと押したら結果が出る、そんな簡単なことではありません。ですが、しっかり導入しその後も継続して取り組めば着実に成果に繋がっていくものです。
安直に取り組んでも習得できないからこそ、しっかり取り組んだ企業にとっては、競合他社に対する競争優位や、顧客価値を捉えたイノベーションの実現に貢献してくれるのです。
次回のコラム「TRIZとは?(第7回)中堅中小企業にとってこそ、TRIZは「経営と製品開発の強力な武器」になる」では、実際にTRIZを活用している企業の中でも、中堅・中小企業がその限られたリソースを活用して革新的な商品開発や技術開発にチャレンジしている例を紹介します。
鹿倉@IDEA
従来のアプローチの延長では課題を解決できないときどうする?
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