TRIZ創始者のおしえ(第1回) アルトシュラーの思い
こんにちは、株式会社アイデアで講師を担当している笠井です。
TRIZ(トリーズ)は、膨大な特許・技術文献の統計的分析に基づき、革新的な問題解決のための発想の着眼点や、思考プロセスを体系化した理論です。元々旧ソ連で研究され、その後東西冷戦の終焉と共に欧米、そして1990年代後半には日本や韓国などへも広がりました。
私がTRIZに出会ったのは20年以上前です。当時在籍していたメーカーで、社内の技術者にTRIZを普及・展開するために、先ずは活動の推進担当者として3日間のTRIZ研修を受講しました。
それ以降、メーカーにおける社内推進担当者として、その後IDEAのコンサルタントとして、私はこれまで「TRIZの日本式活用法」の展開に関わってきました。そして今回あらためてTRIZ創始者であるG・アルトシュラー(Genrich Altshuller)のTRIZ普及に対する熱い思いについてふり返ってみることにしました。
参考にした資料は、アルトシュラーが語りかけている映像(入手経路不明、言語は当然ながらロシア語で、英語字幕入り、1974年制作)と、アルトシュラーの著書『発明発想入門』※(遠藤敬一・高田孝夫訳、株式会社アグネ、1972年出版) (※原題の直訳は 「発明のアルゴリズム」 1969年出版)です。
それらには、旧ソ連国内でTRIZの研究と普及活動に邁進していたアルトシュラーの、原点に近い考え方が込められているように感じましたので、そこからくみ取ったTRIZの思想を私なりにコラムとして記してみたいと思います。
アルトシュラーは、初心者でも短時間で良い発明ができるような「道筋」を教えるべきで、そのためには「創造性の術(すべ)」が必要だと考えた
アルトシュラーは映像の序で、発明には時間がかかってしまうということを、船乗りを引き合いにして説明しています。つまり、船乗りは自分の航海で把握した岩礁や浅瀬を海図に記して、後に続く船乗りたちに知らせることができるが、発明家は海図に相当するようなものを作らないので、初心者たちは皆が同じような失敗を犯してしまうというのです。
ですから良い発明をするためには多くの経験が必要で、それには長い年月がかかるとされてきました。しかしアルトシュラーは、初心者でも短時間で良い発明ができるような道筋を教えるべきであると考え、そのためには創造性の術(すべ)が必要であると述べています。
私は、ここにこそ、それがTRIZ(発明的問題解決“理論”)と命名されたいわれがあると考えます(以降、「創造性の術」を「TRIZ」と表記します)。
TRIZが作られたのち、アルトシュラーと彼の弟子たちは旧ソ連国内の多くの都市でセミナーを開催してTRIZを教えていました。この映像はセミナーの様子を撮影して、具体的にどう教えられていたかを例示するために制作されたものと思われます。
次回から数回にわたり、アルトシュラーがどうやって学生たちにTRIZを指導していたかを、感じたままにお伝えしてまいります。その主な内容は、「試行錯誤法」「理想解」「ARIZ」「心理的な障壁」などです。
笠井@IDEA