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研究開発者のテーマ創出力と課題解決力を組織的に強化する(第7回): ブレークスルーを生む革新的課題解決


​​​​​​​​​​​​​​鹿倉プロフィール


こんにちは、IDEAの鹿倉です。


前回のコラムでは、QFD手法を活用した「ターゲット用途で事業化を目指すためのニーズ分析・課題抽出」と題して、開発企画段階における3つのギャップ

  • 顧客ニーズと開発コンセプトのギャップ
  • 開発コンセプトと開発仕様のギャップ
  • 開発目標と技術課題のギャップ

を、QFDを活用してどう解消していくか、そのための5つのステップをご紹介しました。




今回は、技術課題をブレークスルーするための、TRIZ手法を活用した「革新的な課題解決のプロセス」についてお話しします。





本連載コラムの各回のテーマ
(リンクをクリックすると各回のコラムに移動します)

第1回 「Where/What/How」に、体系的アプローチで取り組む

第2回 アイデアを出し、課題を解決するための具体的なフレームワークが必要

第3回 限られた時間の中で、成果を出すためのフレームワーク

第4回 自社の技術(材料)シーズと、未来の顧客ニーズを繋ぐ

第5回 シーズドリブンQD手法とGoldfireを活用して、新規事業機会を探索する

第6回 ターゲット用途で事業化を目指すためのニーズ分析・課題抽出

第7回 ブレークスルーを生む革新的課題解決

第8回 バラツキを抑えて新しい技術コンセプトを具現化

第9回 具体的な開発テーマが決まらない

第10回 新規事業のターゲット用途の将来像(ニーズと課題)を予測する










目次[非表示]

  1. 1.TRIZ(発明的問題解決理論): ブレークスルーを生む革新的課題解決
    1. 1.1.研究開発のプロセスにおけるTRIZの位置付け
    2. 1.2.なぜTRIZが必要か? どんなときにTRIZが必要か?
  2. 2.TRIZによる課題解決のプロセス
    1. 2.1.課題をどう設定するか、合理的に検討し意思疎通を図る
    2. 2.2.課題の実現、問題の解決を阻んでいる根本原因を探る
    3. 2.3.アイデアを発想し、そのアイデアを組み合わせて解決策を創出する




本連載コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。
​​​​​​​是非ご覧ください。

  資料ダウンロード|R&D部門のテーマ創出と課題解決力を強化する R&D部門の開発テーマ創出と課題解決力を強化するための、体系的なメソッドと支援ソフトウェア活用の概要紹介資料をダウンロードいただけます。 株式会社アイデア



TRIZ(発明的問題解決理論): ブレークスルーを生む革新的課題解決



研究開発のプロセスにおけるTRIZの位置付け


第1回のコラム「”Where/What/How”に体系的アプローチで取り組む」でご紹介した図を再掲します(下図)。


ここまでの流れに沿うと、

  • ”Where"(どこで事業化を目指すか)を考えるプロセスが「テーマ探索(シーズドリブンQD)」プロセスで(第4回で紹介)
  • 次に”What"(事業化を目指す用途で”具体的に何をつくるか”)を考えるのが「QFD(ニーズ分析・課題抽出)」です(第6回で紹介)
  • そして”How"(課題をどうブレークスルーして、開発コンセプトを実現するか)を支援するのが今回の「TRIZによる課題解決」です。

研究開発の大きな流れと開発手法の役割

さらにTRIZの次のステップとして、TRIZで創出した新しい技術や課題解決のアイデアを、高い信頼性を確保できるように最適化する手法として「タグチメソッド」があります(下図)。



テーマ創出から課題解決まで体系的手法でサポート



なぜTRIZが必要か? どんなときにTRIZが必要か?


開発者がテーマに取り組む際、常に次の2つを念頭に置いて開発を進めるでしょう。


  • 開発する新技術(や新素材)は、顧客の課題を解決し、新しい価値を生み出せるか?
  • その課題を解決する他の手段はあるか?それらに対して競争優位性はあるか?


この二つのどちらかでも欠けていると、せっかく苦労して開発した新技術や新素材が、市場への出口が見つからず、事業化のメドが立たない、ということになりかねません。


この2つをクリアするためには、顧客に高い価値訴求ができるように、そして競合他社が簡単に追従できないように、高いレベルに目標を定めて課題を解決する必要があります。


もちろん従来からの技術やアイデアの延長線上で課題を解決できる場合もあるでしょう。しかし多くの場合、新事業や新製品につながるような新しい技術の開発には、今までにない着眼点からの発想や、新しいアイデアとの組み合わせが不可欠です。


TRIZは、システマチックな課題分析と、膨大(文字通り”膨大”です)な特許・技術事例に基づくアイデア発想手法により、試行錯誤から脱却し、限られた時間の中で革新的な課題解決策を創出することを支援します。



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TRIZによる課題解決のプロセス


IDEA-TRIZの課題解決プロセス



「TRIZによる課題解決」のプロセスは、大きく分けて、上の図に示すような4つのステップから成ります。


課題をどう設定するか、合理的に検討し意思疎通を図る


ステップ1では、優先的に取り組むべき課題の範囲を検討し、課題を具体的に定義します。
まず課題の全体像を俯瞰して、どのような検討項目、パラメータがあるのか概要を掴みます。次にプロジェクトの目的や制約条件を考慮して優先度を決め、取り組むべき優先技術課題を具体化します。


例えば、「〇〇という機能を備えた現行製品があって、それを小型・軽量化する技術を開発する」のと、「(現行製品には囚われずに)〇〇という機能を備えた、小型で軽量の新しい何かを生み出そうとする場合の技術開発」では、課題の設定はまるで異なります。


これは極端な例かもしれませんが、プロジェクトに取り組むチームメンバー間や、チームとマネジメント層との間で、”課題設定の認識に食い違い”が生じることは珍しくありません。適切に課題を設定することは、課題解決成功の第一歩となるので、曖昧なままスタートせずに、合理的にきっちりと検討し、意思疎通を図り、共通認識を持つことが大切です。



課題の実現、問題の解決を阻んでいる根本原因を探る


ステップ2は、「あるべき姿」の実現や、問題の解決を阻んでいる要因を分析して、開発者が解決すべき根本原因を明らかにする段階です。よく「なぜなぜ分析では、なぜを5回繰り返せ」とも言われますが、繰り返せば必ずしもヌケモレのない網羅的な分析ができるわけではありません。


TRIZでは、まず”機能”という視点で、課題の対象システムを捉えていきます。ここで「システム」とは、製品やサービス、自社の製造工程や業務プロセス、あるいは顧客の製造工程や業務プロセスなど、様々なものが対象となります(その優先対象をどう選択するかを合理的に検討するのが、前段のステップ1「課題設定」です)。


製品・サービスにしても、自社や客先の工程/プロセスにしても、システムは必ず担うべき「機能」を持っています。そしてシステムの構成要素は、その「機能」を実現するための「サブ機能(さらにそのサブ、そのサブのサブ...)」というべきものを担っています。


今私の目の前には、テイクアウトしたコーヒーの紙コップがあります。コップ本体にも、本体のざらざらした表面にも(内側の表面はつるつるしている)、プラスチック製の蓋にも、蓋の縁の細い切り込みにも...ひとつひとつのものに「機能(役割)」があります。




例えば、コーヒーをもっと長時間温かいまま飲める紙コップを開発したいと考えるとき、私たちはまず紙コップとその構成要素の「機能」を詳細に理解する必要があります。そしてその機能は、私たちが直感的に思っているほど”明らか”なわけではありません。

  • 有用な機能は何ですか?
  • その陰で有害な機能(副作用)が生まれていませんか?
  • 求められるレベルに対して不足あるいは過剰な機能はありませんか?
  • どの機能とどの機能が背反しますか?...

ステップ2の前半とも言えるTRIZの機能分析は、課題対象のシステムとその成り立ちを、基本に立ち返ってしっかり理解するための手法です。


ステップ2の後半は、前半の機能分析に基づき、課題の達成を阻んでいる根本原因を検討する段階です。

先の例で言えば、なぜカップの中のコーヒーを温かいまま長時間(目標時間)維持できないのか、コーヒーが冷めてしまう原因は何か、その原因を取り除こうとするとどのような問題(副作用、背反問題)が起きるのか...


前段で、紙コップの機能ばらしをして、紙コップとその構成要素がそれぞれどのような機能を担い、それらの機能は相互にどのように関係しているかを理解しているので、私たちは、システムが期待通りに機能しない(この例では、「紙コップは、コーヒーの温度を、長時間に渡り保持する」ことができない)原因を、システム全体の機能分析の結果を参照しながら、ロジカルかつ網羅的に掘り下げることができます。



アイデアを発想し、そのアイデアを組み合わせて解決策を創出する


ステップ1で取り組みの優先範囲と具体的な課題設定を考え、ステップ2で課題の実現や問題の解決を阻んでいる根本原因を分析してきました。
ステップ3は、いよいよ「発明原理」や「システム進化パターン」といったTRIZのツールを活用して、その根本原因を解決するためのアイデアを発想する段階です。


ここで大切なことは、ステップ1と2でしっかりと課題を設定、分析した上で、アイデアを発想する段階に至っている、ということです。


「早く解決したい(解決策が欲しい)」、「急いでいるのに課題分析なんか面倒でやっていられない」...忙しいとき、期限に追われているとき、私たちは、ついそういう誘惑にかられてしまいます。


しかし、皆さんがTRIZを使うときはどんなときでしょう? それを思い出してみてください...そう、”従来からの技術やアイデアの延長線上では解決できないような課題”、を解決したいとき、ですね。つまり、私たちは「難題」や「新しいチャレンジ」のためにTRIZを使います。簡単に片づけられる相手ではありません。ステップ1と2の課題設定、課題分析をしっかり行うことは避けて通れない大切なステップです。






もうひとつ大切なことは、「素材(材料)」としての「アイデア」と、その「素材」を組み合わせてつくる「解決策」を、きちんと分けて考える(手順としても)ということです。理屈っぽく聞こえるかもしれませんが、料理に例えると分かり易いです。


料理をつくるとき、まずは材料を揃えます。チャーハンをつくるなら、ご飯、ボールに溶いた卵、細かく刻んだチャーシューや海老、塩コショウなどの調味料、サラダ油、といった材料です。そしてそれらの材料を順番に中華鍋の中で炒め合わせチャーハンという料理をつくります。材料を揃えないまま、いきなりチャーハンをつくることはできません。またチャーシューだけではチャーハンにならないですし、海老だけでもならない。料理は材料を適切に組み合わせることでできます。


アイデアと解決策の関係も同じです。
ステップ3で、TRIZのツールを使ってアイデアを発想することは、料理に例えると、筋の良い材料を沢山揃えることに他なりません。材料(アイデア)のひとつひとつは、単独では料理(解決策)にはなりません。ステップ3で大事なことは、美味しい解決策(料理)のための良いアイデア(材料)を沢山揃えることです。アイデアが増えれば、つくれる解決策の幅も広がります。


ステップ3で沢山のアイデア(材料)を揃えました。
ステップ4は、それらのアイデアを評価し組み合わせて、課題解決策という料理に仕上げるプロセスです。私たちIDEA流のTRIZ課題解決プロセスでは、この「アイデア ⇒ 解決策(コンセプト)」のための体系的なメソッド(料理で言えばレシピ)も提供します。


こうしてステップ1~4を経て創出した解決策は、短期的に実現する案、戦略的視点から中期的に取り組む案、より長期的に基礎的な研究開発から着手する案、というように、開発期間や必要なリソース、コンセプトの魅力度・革新性などを指標として、開発ロードマップの形で整理します。


今回は、i-Advanced TRIZのフレームワークの3番目のステップ「TRIZ(ボトルネック課題の解決策創出)」をご紹介しました。次回は、その新しい解決策(コンセプト)を信頼性を確保しながら具現化するための「タグチメソッド」の活用についてご紹介します。


鹿倉@アイデア


本連載コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。是非ご覧ください。

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鹿倉 潔
鹿倉 潔

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