DX(デジタルトランスフォーメーション)成功の鍵はUX(ユーザー体験)にある!(後編)
こんにちは、IDEAの緒方です。
UX(ユーザー体験)のアプローチとは?
前回ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める前にやるべきことがあって、DXの社内ユーザーである従業員の声や更に自社の顧客を意識して、どんな行動をするのか? どんな価値を提供できるのか?をしっかり考えることが重要で、そこにUX(User Experience)のアプローチが役に立つことをお伝えしました。
今回は、UXのことについてもう少し詳しく説明していきます。
UX (デザイン)とは「ユーザーがうれしいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階から理想のユーザー体験を目標にしてデザインしていく取り組みと方法論」として千葉工大 安藤昌也教授がご自身の著書「UXデザインの教科書」で紹介しています。
従って、一般に商品企画でUXを使う場合は、「商品や商品に関連するプロセス」と「顧客」の間の全ての接点や背景となる感情を表すことで、商品に対する潜在ニーズを把握することを目的とします。
ここで、潜在ニーズとは顧客も気づいていないニーズのことで、潜在ニーズは事前の調査や顧客の声を聴く手段では得られず、顧客が商品を使うときの行動分析がベースとなっています(図2参照)。
DXの場合は、企業の社内業務や顧客へのサービスをデジタル化することで、効率を上げたり、新しい価値を提供することを目的とします。
このデジタル化する「業務やサービス」を「商品」と置き換えれば、デジタル化するシステムを使う「従業員やサービスを受けるユーザー」を「顧客」と捉えて、システムと顧客の接点や背景感情から、顧客がシステムへ望む潜在ニーズを掴むことができます。そしてそのニーズに応えるようにデジタル化を考えれば、顧客にとって最適なシステムの実現に近づくはずです。
UXのアプローチの基本は価値・行動・操作
UX (デザイン)プロセスでは、ユーザー体験のモデル化を行う過程で、構造化シナリオ法といって、「価値」⇒「行動」⇒「操作」の順に階層構造で表現することで、体験をより具体化します。「価値」・「行動」・「操作」をそれぞれバリューシナリオ、アクティビティシナリオ、インタラクティブシナリオとも言います(図3参照)。
「価値」はユーザーの行動の根源となる「価値観」で最上位に来るものです。
「価値観」には様々なものがあり、一人一人異なるものですが、デジタル化するシステムを使う従業員やサービスを受けるユーザーが何を一番重んじるかを少し一般化して設定します。例えば、”効率や信頼”、”ユーザーに役立つことを重んじる”等です。
自社の従業員や顧客が何を大切に思うかを「価値観」として表現し、その価値観のもと、業務や顧客へのサービスという「行動」で達成したいゴール(目標)を決め、その結果、「行動」や「操作」をする場合、何を感じ、どんな要望(ニーズ)を持つかを想定していきます。
その際に行動ごとに出て来るニーズの要求の強さや競合他社との比較をしながら優先度を決めて、想定ニーズを検証していくのが UXニーズ分析の流れとなります。
行動・操作を「機能」で表現し、組織やシステムと関連づける
構造化シナリオ法では、「価値」⇒「行動」⇒「操作」の順に階層構造で表現しますが、「価値」を基にした「行動」や「操作」を、時間の流れに沿って正確に把握するために「機能」を使います。
行動や操作を、”S(主体)はO(対象物)にV(働き)をする”という機能として「S+V+O」で表現することで、人の業務が何のための行動なのかその目的を意識しながら記述できるので、行動の分析者によるバラツキを減らすことができます。
しかも機能は機能系統図という形で、”上位の目的を達成するために下位の手段がある”といった形で、ツリー(階層構造)で記述することができます。
全ての業務やサービスには最終目的があり、これが「行動」や「操作」のツリーの最上位になります。このゴールと自分達の「価値観」とを合わせることで、行動に伴う背景感情やニーズを想定し易くします。
このようなツリー構造をベースとした時間分析はExcel(エクセル)などで作ろうと思っても複雑で、整理し難いですよね?
そこで使うツールが、IDEAの“「機能」で考える”目的別課題解決プログラムのために開発されたソフトウェア「iQUAVIS IDEA Package」です。
iQUAVIS IDEA Packageを使うと、「行動」や「操作」を時間の流れに沿って時系列に機能で表現したり、業務を実行する組織やITシステムを空間の構成で表現して、「行動・操作」と「組織・システム」との関係を「時間 - 空間」の関連表で表すこともできます。
UXニーズ分析をiQUAVIS IDEA Packageで容易に行う
iQUAVIS IDEA Packageでは、空間や時間の機能分析が専用のツールで可能です。またUXニーズ分析のプログラム(モジュール)では、上述の価値観やゴールの設定、ニーズ想定もできるようになっていて、誰でも手順に従って操作するだけでUXニーズ分析ができます。
図4に湯沸かしポットでユーザーがコーヒーを入れる事例でのUX分析事例を示します。図はツリーでの分析ですが、その他にツリーとリンクする表(ワークシート)も表示することができ、ツリーと同時にワークシートでの分析もできます。この事例は湯沸かしポットの商品開発事例ですが、DXの対象となるITツールや社内業務、顧客へのサービスも同様の手順で時間の行動分析ができます。
図4はUX分析の途中の画面を切り出したものですが、iQUAVIS IDEA Packageでは、本コラムの前編で説明した手順に従ってワークフローが設定されているので、特別な知識や手順を習熟していなくても、どなたでも分析できます。従来、UX分析というと、行動分析や行動心理を扱うという意味で、専門家に頼らないと簡単にはできないと思って、手が出せなかった皆さんにもできるようになります。
如何でしょうか? 社内業務プロセスや顧客向けサービスの提供において、DXをより効果的に進めていきたいと悩んでいる方は是非お気軽にご相談ください。
緒方@IDEA
→目的別課題解決プログラム支援ソフトウェア iQUAVIS IDEA Packageについて読む
参考書籍
“「機能」で考える”目的別課題解決プログラムの内容に関連して、緒方の著書2冊が刊行されています。