ターゲット用途で事業化を目指すために、QFDでニーズ分析・課題抽出:研究開発者のテーマ創出力と課題解決力を組織的に強化する(第6回)
こんにちは、IDEAの鹿倉です。
前回のコラムでは、「自社技術・材料シーズを活かせる用途を広く探索する」ための知識検索ソフトウェアGoldfireの活用についてお話しました。
Goldfireを活用することで、開発者は、自社が保有する技術シーズ・材料シーズが
- どのような機能を生むか
- その機能は、どのような用途で必要とされるか
- その用途における課題は何か
- その課題は今はどのような技術や材料で解決されているか、その解決方法における問題は
などを、効率的にリサーチできることを、TOYO TIRE様での「新材料を活かす用途探索のアイデア創出」の取り組み事例も交えてご紹介しました。
第5回のコラムで紹介したTOYO TIRE様の
「新材料(シーズ)を新規事業機会(ニーズ)に繋げる。用途探索のアイデア創出」
の事例インタビューは下記をクリック
第2回のコラムで紹介したリバーエレテック様の
「自社のユニークな技術を活かせる新規事業機会創出」
の事例インタビューは下記をクリック
今回は、「用途探索」の次の段階となる、QFD手法を活用した「ターゲット用途で事業化を目指すための、ニーズ分析・課題抽出」についてお話しします。
本連載コラムの各回のテーマ
(リンクをクリックすると各回のコラムに移動します)
第1回 「Where/What/How」に、体系的アプローチで取り組む
第2回 アイデアを出し、課題を解決するための具体的なフレームワークが必要
第5回 シーズドリブンQD手法とGoldfireを活用して、新規事業機会を探索する
第6回 ターゲット用途で事業化を目指すためのニーズ分析・課題抽出
第10回 新規事業のターゲット用途の将来像(ニーズと課題)を予測する
目次[非表示]
本連載コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。
是非ご覧ください。
QFD(品質機能展開): ターゲット用途で事業化を目指す上でのニーズ分析と課題抽出
私たちIDEAの「i-Advanced TRIZ」のフレームワークの二番目のステップは、「QFD/ニーズ分析・課題抽出」です(下図)。
前段の「テーマ探索」で、自社技術・材料シーズを活かす用途を探索し、さらに優先的に取り組むターゲット用途を絞り込んだら、次は、そのターゲット用途で”勝てる”商品(製品・サービス)を生み出すための、具体的な技術開発のコンセプトを考える段階に進みます。
しかしその”勝てる”商品の”勝ち筋”をどう見究めたら良いでしょう?
そのための体系化された方法が、私たちIDEA流のQFD(品質機能展開)活用です。
エンジニアの「革新的な企画を発想する力」を強化するための、
QFD活用を紹介するセミナーはこちらから
魅力的で、差別化された新技術(製品)を生むために、開発企画段階における3つのギャップを解消する
顧客にとって魅力的で、競合とも明確に差別化された新技術・新製品を生むためには、
- どのようなニーズに応えることで、新たな顧客価値を提案すべきか
- その価値を実現するための開発仕様と技術課題は何か
を見究める必要があります。
IDEA流のQFDは、その実現を阻む「3つのギャップ」を解消するための体系化されたプロセス・ツールを提供します。
顧客ニーズと開発コンセプトのギャップ
「顧客要求 ≠ 顧客ニーズ」…アンケートやヒアリング調査などで想定顧客の声を集めても、必ずしも「顧客の声」が顧客の本当のニーズを表しているとは限りません。それらは多くの場合、現状の製品やサービスの”仕様”に対する要求や不満であり、その用途の顧客の本当の目的や願望を表現してはいないからです。
表面的な要求に囚われずに顧客ニーズを分析し、真のニーズを捉えた開発コンセプトを構想することが大切です。
開発コンセプトと開発仕様のギャップ
「こんな用途のこんな課題を解決してこういう新しい価値を訴求する」といった開発企画での狙いが、技術(や製品)が実現すべき機能や特性にヌケモレなくきっちりと変換できていない。
例えば、新しく開発した試作品をターゲット顧客に評価してもらう段階まで来たところで、「ここはこうなっていないと扱いづらくて使えないよ」といった反応が返ってきて、やむを得ず開発をやり直す。そんな手戻りが発生していませんか?
もちろん製品化を目指して開発を進める上で、ユーザーとのこうしたキャッチボールによるやり直しや手直しは不可欠でしょう。しかし再検討や再評価に時間もコストもかかる技術開発では、なるべく上流で開発要件をヌケモレなく見通して、最終的な目的(新しい顧客価値の提供)と紐づけて把握しておくことが大切です。
開発目標と技術課題のギャップ
開発目標が決まった時点で、重要な技術課題が抽出できていなかった。そのため、開発が思わぬ暗礁に乗り上げて目標を達成できなかったり、開発期間・コストが膨れ上がったりする。企画段階できちんと技術課題が見通せていれば、事前に対策をしっかりと検討できたはずなのに…。
特に新しい機能や特性を求めて開発を進めたら、見落としていた別の特性が悪化してしまった、そんな経験が皆さん少なからずあるのではないでしょうか?
QFDによるニーズ分析と技術課題抽出のプロセス
「QFDによるニーズ分析と技術課題抽出」のプロセスは、大きく分けて、上の図に示すような5つのステップから成ります。
ステップ1では、ターゲット用途に関わる様々な要素や、ユーザの使用プロセスを俯瞰し、どこに注目してニーズ分析を進めるか検討します。
ニーズを検討する対象ユーザが誰か(例えば、B2Bの製品の場合、直接的な顧客企業のニーズなのか、それとも「顧客企業の顧客」のニーズを考えるのか。また顧客企業の中でも、関係するのはどのような人々か)、ユーザの使用プロセスとしても、搬入、設置、使用、メンテナンス、廃棄回収など、どの工程にフォーカスしてユーザニーズを考えるのか、といった検討、判断をしていきます。
ステップ2では、前ステップで対象として選んだ顧客の使用シーンを検討し、その使用シーンにおいて、顕在化しているニーズの整理と、潜在ニーズの仮説を立てます。
ニーズは、この後のプロセスで、実際にターゲットとする想定顧客へのヒアリングなどを通して仮説検証していきます。しかし効果的な検証のためにも、このステップ2の段階で、これから開発しようとする技術が、ユーザーにどのように使われて、ユーザーが何を得ようとするかを、開発者自身がしっかり考えられるフレームワークを持つことが大切です。
ステップ3は、前ステップで浮き彫りになった数多くのユーザーニーズから優先度の高いニーズを合理的に絞り込むステップです。各ニーズについて、そのニーズを実現することで生まれる顧客価値の高さ、あるべき達成レベルと現状レベルの差、競合や代替技術がそれをどの程度達成しているか、で評価することで、どれを優先的に取り組むニーズとすべきかを明らかにします。
ステップ4と5は、顧客ニーズ(要求品質と呼びます)を技術特性とその目標値にきっちりと変換する段階です。
ステップ1~3までで明らかにした優先すべき顧客ニーズ(それにより新たな価値が生まれる)を実現するためには、具体的にどのような技術特性が重要で、その目標値はどう設定すべきか、を検討します。同時にその開発目標を達成しようとすると、必ず解決しなければならないクリティカル技術課題が何かを明らかにします。解決すべき課題を見通すことで、取るべき対策を予め検討することができます。
こうしてステップ1~5を経て明確になった技術課題が、開発者にとっては、取り組むべき開発テーマ(課題)となります。
この開発テーマ(課題)の解決、解決策の信頼性設計といった段階が、i-Advanced TRIZのフレームワークの3番目のステップ「TRIZ(ボトルネック課題の解決策創出)」と「タグチメソッド(新しい技術の信頼性確保)」の段階になっていきます。次回以降、これらの段階についてご紹介していきます。
鹿倉@アイデア
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