アイデアを出し、課題を解決するための具体的なフレームワークが必要:研究開発者のテーマ創出力と課題解決力を組織的に強化する(第2回)
こんにちは、IDEAの鹿倉です。
前回(第1回)のコラムでは、
- 「革新的なテーマを創出(課題を発見)する」、「革新的なアイデアで課題を解決する」の二つの力が、今は多くの企業で個人のスキルや経験に依存していること。この二つの力を、組織的にレベルアップする必要性が高いこと
-
シーズドリブンQFDやQFD、TRIZといった体系的開発手法は、そのための「フレームワーク」と「共通言語」を提供できること
- 私たちIDEAでは、体系的メソッドとツールの連携(下図)で、その実現を支援していること
をご紹介しました。
今回は、テーマ創出や課題解決のための「フレームワーク(仕組み)」の必要性について、もう少し見ていきたいと思います。
本連載コラムの各回のテーマ
(リンクをクリックすると各回のコラムに移動します)
第1回 「Where/What/How」に、体系的アプローチで取り組む
第2回 アイデアを出し、課題を解決するための具体的なフレームワークが必要
第5回 シーズドリブンQD手法とGoldfireを活用して、新規事業機会を探索する
第6回 ターゲット用途で事業化を目指すためのニーズ分析・課題抽出
第10回 新規事業のターゲット用途の将来像(ニーズと課題)を予測する
目次[非表示]
本コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。是非ご覧ください。
テーマ管理のプロセスはあるが、アイデア創出や課題解決のプロセスがない
目前の新製品の開発企画や設計は事業部門が担うのが原則でしょうから(緊急の品質問題の解決などに、研究開発の担当者が駆り出されることはあるにしても)、通常、R&D部門(研究開発、先行技術開発部門)が担う役割は、
- 既存の事業領域で、中長期的な優位性を維持していくための、先行技術の弾込め
- 技術シーズ起点での、新事業や新製品カテゴリーの創出に繋がるような、新しい開発テーマの創出と技術開発
でしょう。
多くの会社で、新規事業のアイデア創出から事業化までを管理するプロセスとして、「ステージゲート法」のようなプロセス管理システムが導入されています。
R&D部門の活動も、そうした管理プロセスの、特に上流のステージ(段階)に組み込まれていることが多いようです(あるいはR&D部門単独で、独自のテーマ管理プロセスを実行している企業もあります)。
しかしどちらの場合でも共通するのは、「管理するプロセス」はあるが、そのプロセスに乗せるべき「アイデアやコンセプトを具体的に発想する」プロセスや、「課題を解決する」プロセスがない。そのためいくらテーマ管理プロセスを活用しても、実際に筋の良いテーマが数多く生まれたり、課題が解決されてテーマがスムーズに進捗するわけではない、という課題を感じられていることです。
欲しいのは、目標に辿り着くための、具体的なフレームワーク(仕組み)
こうした課題を感じている企業の方は、「アイデアを出し、アイデアをモノにするための”具体的な”仕組み」を求めています。
”具体的な”というのは、例えば、次のような課題に取り組むための”具体的な”仕組みです。
- 「自社が保有する技術を棚卸しする」と言っても、自社の強みを客観的に把握するためには、具体的にどう「棚卸し」したらいい?
- 「自社の強みを活かせる新たな顧客(用途)を探す」と言っても、未知の顧客や用途をどう探せるのか?
- 未知の顧客の、さらにその将来ニーズなんて(今から研究開発するテーマなら、市場に投入できるのは早くても3年後、5年後だ...)、どう考えたらいい?
こうした課題に対して、ロジカル、かつ創造的に考え、アイデアを出す具体的なメソッドやツールがないと、テーマ創出も課題解決もうまく進みません。
多くの企業で困っているのは、経営層の方針や(中期計画など)、様々な外部メディアなどの提言から、「こんなことをしなければならない」というのは分かっていても、そこに辿り着くための手段が見えていない、下の絵のような状態と言えるでしょう。
私たちIDEAが、実際に、クライアント企業と取り組んでいるのは、体系的な開発手法に基づくメソッドとツールを活用した「フレームワーク」により、このギャップに階段をつけて、誰でも一段ずつ自信をもって目標地点まで登れるようにすることです。
「時間は使ったが成果が出ない。そのためモチベーションも上がらない、維持できない」という状態を、「時間を有効に使えて成果が出た。だから自信が得られた。合理的な方法でこれから先も様々なテーマ創出、課題解決にチャレンジできる」に変えていくことです。
この「フレームワーク」を「i-Advanced TRIZ®」と呼んでいます(下図)。
企業事例: 電子デバイスメーカ「リバーエレテック」の新規事業創出
ここでひとつ具体的なクライアント企業事例を紹介します。
山梨県に本社を置く、リバーエレテック株式会社様(資本金16.8億円/従業員196名、http://www.river-ele.co.jp/ja/)は、水晶振動子、水晶発振器を中心とした電子デバイスメーカーです。この業界において小型化をリードし、小型・高性能・高品質を支える技術を培ってきました。
同社が2014年に発表した高周波帯で超高精度の「水晶Lamb波共振子」は、技術的には高く評価されたものの、従来にない高性能が逆に災いして、既存用途の顧客ニーズとのマッチングが難しく、商品化後3年間に渡り販売が進みませんでした。
同社商品開発部の芦沢英紀様によれば、当時は、「技術を開発するのは得意でも、新市場の開拓では壁にぶち当たっていた...」という状況だったそうです。
せっかく開発した高度な技術なのに、3年間も事業展開が滞る、そんな状態だった芦沢様は、2017年のIDEAユーザミーティングに参加した日のことを、次のように振り返られています。
QFDやTRIZといった体系的開発手法の考え方とGoldfireソフトウェアの知識検索機能を活用した「シーズドリブンQD(品質展開)」というシステマチックなプロセスがあることを知って、正直「衝撃」を受けました。
このシステマチックなアプローチなら、私たちが開発した水晶Lamb波共振子の機能・特性を生かせる新しい用途を見つけ、新しい事業の創出に繋げることができそうだと確信しました。
その後、実際にSDQD(シーズドリブンQD/テーマ探索)メソッドと、知識検索ソフトウェアGoldfireを活用したコンサルティングを実施、その結果に基づいて営業展開し、新市場(北米の航空宇宙無線市場)への進出を見事に果たされました。
シーズドリブンQDという体系的な手法に基づく具体的なプロセスと、Goldfireという最先端の知識検索ソフトウェアを組み合わせることにより、「目的地」(=新事業創出)への階段を着実に登ることができたのです。
次回は、「限られた時間の中で、成果を出すためのフレームワーク」についてお話します。
本コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。是非ご覧ください。
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鹿倉@IDEA