具体的な開発テーマが決まらない:研究開発者のテーマ創出力と課題解決力を組織的に強化する(第9回)
こんにちは、IDEAの鹿倉です。
技術開発部門や研究開発部門の皆さんは、将来のための先行技術の”弾込め”を担っています。
しかし、現行製品の改良のための技術開発のように課題が明らかな場合と比べると、新しい開発テーマの創出に臨むのは、ずっと”漠然としていて、どう考えればよいかアプローチするのが難しい”ものとなります。
前回までのコラムでは、シーズドリブンQDやQFD、TRIZ、タグチメソッド(品質工学)などの各手法、そして知識検索ソフトウェアGoldfireを活用した「テーマ創出~課題解決のプロセス」を紹介してきました。
今回は、最近クライアント企業の方との会話の中でよく話題となる、「経営戦略と開発テーマとのギャップ」と、それに関連して開発テーマ創出にロジカルなステップで取り組むためのアプローチについてお話しします。
本連載コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。是非ご覧ください。
本連載コラムの各回のテーマ
(リンクをクリックすると各回のコラムに移動します)
第1回 「Where/What/How」に、体系的アプローチで取り組む
第2回 アイデアを出し、課題を解決するための具体的なフレームワークが必要
第5回 シーズドリブンQD手法とGoldfireを活用して、新規事業機会を探索する
第6回 ターゲット用途で事業化を目指すためのニーズ分析・課題抽出
第9回 具体的な開発テーマが決まらない
第10回 新規事業のターゲット用途の将来像(ニーズと課題)を予測する
目次[非表示]
経営計画で提示された目標を実現するための、新しい技術やアイデアが求められているが、その”弾込め”をするための具体的な開発テーマが決まらない
さて、皆さんの会社の中期経営計画にはどのようなことが書かれていますか?
例えば、次のような社会課題を挙げて、「当社独自の製品・ソリューションを通じて、これらの社会課題の解決に貢献する」、そんなことが書かれていませんか?
- 気候変動問題への対応
- 健康・長寿社会への対応
- 食料問題への対応
- 安全・快適な次世代モビリティへの対応
- ...
今やあらゆる企業がこうした社会課題の認識とその解決を経営の最重要事項に掲げています。
それだけこうした課題において、私たちの社会が切羽詰まった状態にあり、その解決に貢献することが企業としての使命とみなされ、また事業継続や将来の成長機会としても”現実的に重要視”されるようになっているからでしょう。
ここで皆さんにとって難題が持ち上がります。
技術開発や研究開発といった、将来のための”弾込め”を担う皆さんは、次のことを考えなければなりません。
こうした社会課題の解決に繋げるには何をつくればいいか。
しかも解決に繋がれば何でもいいわけではなくて、なぜ他の会社ではなく自社がそれをやる意味があるのか、競争優位や差別化はできるのか。
それを製品化する上でどんな課題があるのか、その課題をクリアするためには何が必要になるか...
こうした問いに対して、皆さんはその答えとなる新たなアイデアを考え、自分自身が納得することは勿論、上司や経営層、関係する部署のメンバーなど様々な人々にも納得してもらう必要があります。
しかし、現行製品の改良のための技術開発のように課題が明らかな場合と比べると、新しい開発テーマの創出に臨むのは、ずっと”漠然としていて、どう考えればよいかアプローチするのが難しく”なります。
世の中のメガトレンドから導いた取り組むべき社会課題は明確になっている。その課題において、自社がどんな技術領域を重視しているのかもわかっている(=これらは中期経営計画などで提示されることが多い)。
しかし具体的にどのような機能をどのようなレベルで実現する技術やビジネスモデルを開発すべきか。それにより具体的にどのような顧客価値や競争優位が生まれるのか、”開発テーマの具体像”となると曖昧だ。
こんな悩みは皆さんにも共通しませんか?
テーマ創出にロジカルなステップで取り組むための3つのアプローチ
私たちIDEAでは、こうしたテーマ創出について、大きく分けて次の3つのアプローチを提供しています。1と2は市場ニーズを起点とするニーズドリブンなアプローチ、3は自社技術や素材を起点とするシーズドリブンなアプローチと言えます。
- 自社の戦略(重点)領域における、将来ニーズ・課題の探索から、開発テーマを具体化する
- 既存の製品カテゴリーあるいは顧客用途において、新しい顧客価値に繋がるような潜在ニーズを探索し、そこから開発テーマとして具体化する
- 自社の保有技術の強みを活かした、新しい事業機会(用途)を探索する
1は、今回お話した「社会課題の解決に繋がるような開発テーマの具体化」の際に有効なアプローチです。
自社が重視する領域(市場・顧客・用途・製品・技術など)で、将来の顧客ニーズや課題を検討する上での着眼点を合理的に洗い出し、その着眼点に沿って、顧客や用途を取り巻く環境・要因の将来起こりうる変化を予測し未来ニーズを検討します。
そして、そこから自社が堅持すべき技術ベースを基に課題の解決(やその他の目標)に繋がるターゲット用途を絞り込みます。
ターゲット用途については製品化の時期を想定して、より具体的な未来のニーズ・課題を抽出していきます。
2は、既存の事業領域において、次世代製品やサービスのアイデアを考えるような場合のアプローチです。
顧客(B2B、B2C問わず)の行動や操作などの分析から、新しい顧客価値を生むような潜在ニーズや現状課題を探索し、ニーズの重要度、競合比較から、具体的な開発テーマを創出します。
3は、自社が保有する(あるいは開発している)技術について何が本当の強みなのかを理解し、そこを起点として先入観に囚われずに広く可能性のある新規用途を探索します。
そして数多くの用途候補を出した後で、自社の経営・技術戦略に基づき優先度をつけてターゲット用途を絞り込み、絞り込んだ用途については製品化の時期を想定して、未来ニーズ・課題を抽出していきます。
次回は、新規事業のターゲット用途に関して、TRIZの9画面法を使って市場投入時期のニーズや課題を具体的に予測する方法を紹介します。
開発テーマの創出や、テーマ創出スキルの組織的なレベルアップに悩まれているのであれば、是非一度お気軽にご相談ください(お問い合わせはこちらから)。
鹿倉@アイデア
本連載コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。是非ご覧ください。