シーズドリブンQD手法とGoldfireを活用して、新規事業機会を探索する:研究開発者のテーマ創出力と課題解決力を組織的に強化する(第5回)
こんにちは、IDEAの鹿倉です。
前回のコラムでは、”機能”を考えることが、「自社が保有する技術・材料」と「未来の顧客のニーズ」を繋ぐ、ことについてお話しました。
今回は、その”機能”を切り口に、その機能に関する強み・弱みや、その機能を活かせる用途、同じ機能を提供する競合・代替技術、などを効率良くリサーチできる知識検索ソフトウェア「Goldfire」をご紹介します。
本連載コラムの各回のテーマ
(リンクをクリックすると各回のコラムに移動します)
第1回 「Where/What/How」に、体系的アプローチで取り組む
第2回 アイデアを出し、課題を解決するための具体的なフレームワークが必要
第5回 シーズドリブンQD手法とGoldfireを活用して、新規事業機会を探索する
第6回 ターゲット用途で事業化を目指すためのニーズ分析・課題抽出
第10回 新規事業のターゲット用途の将来像(ニーズと課題)を予測する
目次[非表示]
本連載コラムでご紹介した内容をまとめたダウンロード資料を用意しました。是非ご覧ください。
意味検索に基づく「知識の発見(エンジニアリング・ナレッジ・ディスカバリー)」ソリューション
Goldfireは、ユニークな自然言語処理・機械学習・セマンティック検索(意味検索)テクノロジーに基づく、最新の「コグニティブ検索ソリューション※」です。
- コグニティブは「認識、認知」という意味です。
コグニティブ検索とは、単に情報を検索するだけでなく、ユーザの検索意図を認識して、その意図と関連性の高い情報や知見を抽出する検索テクノロジーです。
Goldfireは、研究開発や製品開発プロセスの様々な段階で、「知識に裏付けられた分析、発想、意思決定」をサポートします。
Goldfireの知識検索機能の全般については、下記より資料をダウンロードできます。
ここでは、Goldfireを使ってどのように「”機能”で検索する」のかを見ていきます。
文章の意味を理解するセマンティック検索(意味検索)
Goldfireは、文章の単語同士の意味的な係り受けを分析し、ユーザのリサーチ意図に沿った検索を実行します。
例えば「レーダーは歩行者を検知する」というクエリで検索すると、検索対象(知識ベース※)から、「レーダー(主語)+検知する(作用)+歩行者(目的語)」の意味と一致する結果を返します。
- Goldfireでは、特許、技術文献、工業規格など、膨大かつ質の高い情報に基づく知識ベース(Goldfireインテリジェンス)を利用できます。
さらにユーザは、社外のWebサイトや、社内ファイルサーバ上の文書ファイル、IBM Notes(Lotus Notes)やMicrosoft SharePointといった各種ドキュメント管理システム上の文書ファイルなど、企業毎に新たな情報ソースから知識ベースを追加することが可能です。
今度は「高吸水性樹脂の利点は何か?」のようにクエリを質問文にしてみます。
するとGoldfireは、質問に対する回答の候補を探します。
さらに見つかった回答の一覧リストも自動生成します。
これがGoldfireのQ&Aテクノロジーです。
Goldfireに「高吸水性樹脂の利点は何か?」と質問すれば、膨大な知識ベースから、高吸水性樹脂にはどのような利点があるかを調べて、見つかった回答と、その回答の根拠となる引用文を瞬時に結果として返します。
文章の中に直接的に「利点」という表現がなくても、「優れた」のような表現があれば利点として認識します。
短時間で”知識武装”を可能にする「知識ナビゲータ」
皆さんが「検索する」とき、探している情報が何か、情報をどんな切り口で探せば良いかはっきり分かっている場合もあれば、探している情報も探す切り口もまだ曖昧でぼんやりしている場合もあるでしょう。
またそれらがはっきりしている場合でも、実は、そんな皆さんが持つ「レーダー」の外に、課題を考えたりアイデアを発想する上で重要なヒントがあるかもしれません。
研究者、開発者であれば、きっと常に「新たな気づき」には貪欲でしょう。
そんな目的のために有効なツールが、Goldfireの「知識ナビゲータ」」です。
Goldfireの知識ナビゲータは、検索結果の文書内容を読み取り、様々な切り口からテーマ(クエリ)に関する知識(情報)を抽出し、カテゴリー毎に自動的に分類・表示します。
例えば「高吸水性樹脂」とクエリを実行すると、
- 高吸水性樹脂の種類、
- 利点・欠点、
- 使われている用途や場所、
- 製造方法や条件、
- 高吸水性樹脂の機能や効果、など
予め定義されている数十種類の切り口で自動的に知識・情報を集め、カテゴリー毎に整理して表示してくれます。
テーマについて何を知るべきか、どう探せばよいかが曖昧でも、知識ナビゲータを使えば、効率良く対象テーマの関連情報・知識を俯瞰し、知識武装することができます。たとえリサーチの対象が馴染みの薄い領域のテーマであっても、短時間で“知識の土地勘”を獲得できます。
自社技術・材料シーズは「どこで、どう活かせるか」をGoldfireを使って探索する
Goldfireのセマンティック検索(意味検索)、Q&Aテクノロジー、知識ナビゲータといった機能を活用することで、研究開発者は、自社が保有する技術シーズ・材料シーズが
- どのような機能を生むか
- その機能は、どのような用途で必要とされるか
- その用途における課題は何か
- その課題は今はどのような技術や材料で解決されているか、その問題は
などを、効率的にリサーチできます。
そして、
「調べる/知る」→「考える/発想する」→「新しい視点で調べる/知る」→「その結果に基づいて、さらに考える/発想する」
を繰り返しながら、自社技術・材料シーズを活かしてどのような新製品、新事業を生み出すことができるか、のアイデアを発想したり、そのアイデアを検証していくことができます。
企業事例(TOYO TIRE株式会社): 新たに開発した技術(材料)を、どのような用途のどのような課題解決に繋げるか。Goldfireを活用した用途探索のアイデア創出
第3回のコラムでは、TOYO TIRE株式会社 先行技術開発部様における、タイヤ静音化の新技術「Toyo Silent Technology」の開発事例をご紹介しました。
今回ご紹介するのは、同社の中央研究所様での、「新材料を活かす用途探索のアイデア創出」の取り組み事例です。
対象テーマとなったのは、同研究所が新たに開発した「液晶ポリウレタンエラストマー」です。
熱などの刺激によってユニークな変形挙動を示す特徴と、柔軟な弾性を兼ね備えた液晶ポリウレタンエラストマーは、「人との親和性」や、「状況変化への適応性」を実現する材料として期待はあったものの、工程の複雑さや加工の難しさなどの様々な問題があり、これまでは実用化には至っていませんでした。
今回最適なポリマー素材の採用や分子構造の最適設計、成型工程の工夫などにより、従来からの問題を一挙に克服して、連続成形が容易で、高い柔軟性、大きな伸縮力を持つ熱応答性に優れた液晶ポリウレタンエラストマーを開発されました。
しかし、この新技術を一体どんな用途に使えるのだろう、どんなニーズに繋がるのだろう、というところはまったくの未知だったそうです。
従来のやり方では、アイデアの発想が狭く、また自社の専門外の領域の情報収集も進まなかった
この材料を活かせるニーズを見つけて、そこに向けて事業化のための研究開発をさらに進めたい、そのためにはまず有望な用途とニーズを見つける必要がある。それが今回の課題でした。
そのために従来は、インターネットや展示会、あるいは人的ネットワークを使って情報収集されていたそうです。しかし、そのやり方では、「材料ありき」の発想を超えられない、自社の専門外の領域となると情報収集も手詰まりになる、といった課題がありました。
今回、シーズドリブンQDの「機能」を考え「機能」で用途のアイデアを発想するプロセスと、Golfdireの知識検索機能を活用して、それらの課題の克服に取り組まれました。
取り組みをリードされたTOYO TIREの長谷川裕希様は、取り組みとその成果について次のようにコメントされています。
フローに沿って、「Goldfireで検索する(調べる)」と「自分で考える」を適宜組み合わせながらプロセスを回していきました...(中略)...Goldfireを使うことで、リサーチの範囲を自分の行動範囲外まで広げて、しかも容易に情報を得られるというのが大きな強みだと感じています...(中略)...何もないところから考えるのはすごく大変ですが、考えるきっかけを色々な形で見せてくれる、眺めていて沢山の気づきが得られる、というのがGoldfireの強いところですね。
長谷川様に今回の取り組みの詳細ついてお伺いしたインタビュー記事はこちらからご覧ください。
シーズドリブンQDのプロセスとGoldfireを活用した新規事業開拓の事例については、コラムの第2回でご紹介したリバーエレテック株式会社様の事例も是非ご覧ください。
次回以降のコラムでは、ターゲット用途(顧客)に対して、新しい価値を提案し実現していくための、QFD-TRIZ手法プロセスの活用についてご紹介していきます(下図でハイライトしているステージ)。
鹿倉@アイデア
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