技術者のためのイラストレーション講座 ~基礎編~(1)
こんにちは、アイデアの笠井です。
このタイトルを見て 「え、何?」って、不思議に思われた方が多いと思います。私のコラムでは、これから数回にわたり、イラストレーションの描き方についてお伝えします。イラストレーションとは、製品の取扱い説明書などに使われている線画のことです。
「でも、IDEAのホームページでなぜ線画なの?」
はい、これにはちゃんとした訳があります。私たちが現在取り組んでいる問題解決のためのコンサルティングは、下図に示したようなプロセスになっています。
この中盤にある 【②アイデアの創出】 では、IDEA-TRIZ Toolbox の「40の発明原理」や「システム進化パターン」の事例を参考にして、たくさんのアイデアを発想します。
- 詳しくはIDEA-TRIZ Toolboxの紹介ページや、片桐のコラム記事をご覧ください。
発想したアイデアは、付箋紙(75mm×75mm)などにどんどん書き込んでいくのですが、そのとき必ず簡単な図やイラストで表現して、必要な補足(説明)コメントを付け足すようにお願いしています。そのわけは以下のとおりです。
- 文字情報だけで記述すると、後で見返すときにいちいち文章を読み直さなければならず時間がかかってしまう
- アイデア発想は右脳がつかさどっており、イメージ情報の記憶や創造性、図形の把握などを得意としているが、文章の記述や分析については左脳がつかさどっている。そのため右脳と左脳の切り替えが多いと発想の効率が悪くなる
- より多くのアイデアを創出していくためにはブレインストーミングのようなグループ発想が有効である。そしてそこで発想したアイデアは文章で記述するよりも図やイラストで表現する方が他のメンバーに正しく伝わるし、記憶に残る
しかし、そうすると必ずグループ内の何人かは、「自分は“絵心(えごころ)”が無いから無理です」と尻込みされます。それでも是非ともお願いしますと言って描いてもらうと、その図はとても味があって分かりやすい場合がほとんどです。
そこで、図やイラストで表現するのが不得手だと思っている技術者の皆さんに自信を持ってもらえるよう、私の線画のテクニックをお伝えしたいと思い、コラムに載せることにしました。イラストレーションの描き方は問題解決の範疇ではありませんが、簡単なコツを身につけるだけでアイデアをより正確に伝えることができるので、きっと技術者の皆さんの役に立つはずです。
アイデアを図で表現する場合、絵が上手かどうかではなく、正しく伝わるかどうかが大切です。例えば下の図は、私がTRIZの「発明原理」や「システム進化パターン」の事例から連想して思いついたアイデアを付箋紙にサインペンで描いたものです。いかがですか? これならどなたでも簡単に描けそうだと思いませんか?
しかしこんなに単純な図でも、補足コメントを付け足すことによってアイデアの意図は正確に伝わりますし、記憶にも残ります。
また、たくさん出したアイデアを後で評価・結合して最良の解決策(コンセプト)を生成するときに、個々の付箋紙を見るだけでそのアイデアの内容を思い出すことができるのです。
『技術者のためのイラストレーション講座』は基礎編と応用編に分けて、それぞれを数回ずつで説明していく予定です。そして最後には皆さんが、以下に例示したような線画(IDEA-TRIZ Toolboxの事例用に作画したもの)を思いのままに描けるようになっていただけることを目標に進めていきます。
それでは引き続き次回からのイラストレーション講座をご覧ください。
笠井@IDEA